2014-01-28
■ [book] 『りぽぐら!』(西尾維新)
本屋に行ったら西尾維新の新刊が出ていた。「メフィスト」に載ってたリポグラム小説を本にしたものらしい。
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リポグラムは、特定の文字を使わずに書かれた文章のこと(Wikipedia)。ではどの文字を抜くのか?という話だけど、本書ではちょっと趣向が違っていて、まず日本語の五十音を4つのグループに分け、それぞれのグループの文字を抜いた4つのバージョン(と、文字を抜かない基本バージョン)を収録するという形になっている。
対象となるのは3編の短編小説で、文字に関するルールは以下のように、徐々に厳しくなっていく。
- 最初の「妹は人殺し!」では、最初に著者が6文字「い/う/か/は/を/ん」を選び、残りの文字をくじ引きで分割する。
- 続く「ギャンブル『札束崩し』」では、最初に6文字を残してくじ引きを行い、残った「え/か/ち/に/れ/ろ」がフリーワード(フリーキャラクター?)となる。
- 最後の「倫理社会」では、6文字を残してくじ引きを行い、残った「さ/そ/と/ね/め/る」はどのバージョンでも使ってはいけない厳禁ワードとなる。つまり禁止文字が10字から16字に増える。
いったいこんな制限下でまともな文章が書けるのか?という感じだが、実のところ文章は徐々に崩れていき、最後にはアブストラクトな日本語ラップみたいになってしまう。それでもそこに至るまでのグラデーションや、バージョンによって使われるレトリックが変わっていたりするのが面白い。
ちなみに後書きもリポグラムになっていたり、表紙を開くとパングラムがあったり、表紙の文章 ("妹は寝間を血に染めた身寄り" "ギャンブルへ滅び賭け、億攫え" "壊れぬ説諭システムの穴") も実はパングラムだったりと、本当にこういうの好きなんだなと思わせる仕上がり。
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まあ実験小説なので人を選ぶと思うけど、そういうものに興味があれば。